新しい道路ができることで、わたしたちはその恩恵を授かるわけです。移動時間が短縮されて便利になるし、場合によっては危険な場所を通らなくなって安全になるかも知れません。

古来からそうして、山を切り崩して、川や池を埋めたりして、道路が作られてきました。道路ができることで、わたしたちは豊かな暮らしを築いてきました。このようなことは、日本じゅう、世界じゅうでおこなわれてきたことです。

ただ、気になるのは、そのことによって失われるものがあるのではないか、ということ。山には命が宿っている。その目に見えない命が、これまでわたしたちを守ってきたと思う。単に植物や動物たちのことを言っているのでもないし、オカルトっぽく山の命を言うつもりもありません。

昔の日本人は、そのことを知っていて、各地に神社を建てて、山の命を守ってきたのではないだろうか。神社が建てられない場所には、石碑を建てたりもしたのだろう。

わたしは、切り開かれた土地や、トンネルを通るとき、その祈りにも似た思いをいつも心に宿します。考えてみてほしい。一人の人間が見ることができる世界は、ごく一部でしかないのだと。あたかも世界のすべてを見ているつもりで、知識と想像で補ってきただけのことなのだと。

何をして、何をやめるということではなく、未知の世界に思いを寄せること、きっとそれだけでいいのだと思う。きっとそれだけで何かが変わるのだと思う。

あなたは、どう思うだろうか。